2020年5月13日

吉本ばなな『哀しい予感』幻冬舎文庫、2016年。

百年の孤独』の次にこの作品を選んだ巡り合わせ。普通になりきれずに解体・再生される家族。「私」は忘れることによって、「おば」は裏庭に捨てることによって壊れてしまった過去を不可視化するという相似形。血縁が、あるいは所与のものとしての幸せや生の形式/vita vel regulaが、ある種の呪縛としてあるということ。それは、都会の野生児としてあらゆる家事を放棄して生きてきた「おば」が、紅茶の葉を種類ごとに瓶詰めすることがやめられないというような切なさで表出している。